講習内容の一例

質量と分子量の違い
質量と分子量の違いを理解することが、質量分析の最初の一歩です。ところが、いざ質量分析の分野に飛び込んでみると、誰も質量と分子量の違いを教えてくれません。初心者用のテキストを読んでも、何だかよく解りません。こんな状態で質量分析にかかわりながら、4,5年過ぎてしまうことがよくあります。なぜでしょうか? それは、化学の知識をある程度備えていることを前提として、質量分析の世界が動いているからです。 それでは、質量と分子量の違いをどう理解すれば良いのでしょうか? 質量と分子量の違いを理解するには、まず、質量と原子量の違いを理解する必要があります。酸素原子を例に説明します。酸素の原子量は、15.9994です。それでは酸素の質量は、原子量と同じ15.9994でしょうか? いえ違います。酸素には3つの安定同位体 16O、17O、18Oがあり、それぞれが異なる質量を持っています。16Oの質量は、15.9949です。16Oと17Oの違いは、中性子の数だけです。17Oは16Oよりも中性子が一つ多いのです。従って、16Oの質量に中性子の質量をたせば、17Oの質量になります。中性子の質量は1.0087なので、17Oの質量は計算上は17.0036となります。更に、18Oは16Oよりも中性子を2つ多く持っていますので、計算上の質量は18.0123となりますが、実際の質量は16.9991と17.9992です。これは、質量の一部が原子核を形成する際のエネルギーとして使われているためです。そして、16O、17O、18Oの天然存在比は99.757%、0.038%、0.205%ですので、酸素原子のマススペクトルはイメージで示した図1のように、3本のピークが、天然存在比の強度で現れます。このマススペクトルには、原子量の15.9994はどこにも現れていません。これが、質量と原子量の違いです。ここまで理解できれば、質量と分子量の違いを理解するのはたやすいことです。質量分析講習会で解説します。

Figure1

図1 酸素には3つの安定同位体 16O、17O、18Oがあり、それぞれが異なる質量を持っている。


分子量が大きくなると同位体ピークが大きくなる理由について
このことも、質量分析を理解するうえでの出発点です。しかしながら、分子量と質量の違いと同様、誰も教えてくれません。図2に示した、CH4O、C50H102O、C100H202O等を例にわかりやすく説明します。

Figure2

図2 炭素には2つの安定同位体 12C、13Cがあり、その存在比率は、98.9%と1.1%である。従って、C50の化合物では同位体ピークは55%、C100では110%となる。


試料の調製に必要な単位について
質量分析を行うときに必要な試料の調製には、様々な単位がついて回ります。重量の単位の g、mg、μg、ng、pg、fg、ag、zg、主に気体中や固体中の濃度を示す %、ppm、ppb、ppt、物質量を表す mol、mmol、μmol、nmol、pmol、fmol、amol、zmolと、これを使ったmol/Lといった濃度表現です。きっちり整理しておかないと、頭の中が『ごちゃごちゃ』になってしまいます。これらについても解説します。

酸性官能基、塩基性官能基、極性
試料の調製や前処理、イオン化法の選択に重要な事柄です。わかりやすく解説します。

市販の質量分析計の種類について
四重極質量分析計、飛行時間質量分析計、イオントラップ質量分析計、磁場型質量分析計、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計と、それらをつないだMS/MSが市販されています。あまりにも種類が多いので、きっちり整理しておく必要があります。これらについても解説します。


SED Science Esucation 代表取締役社長: 平山 和雄


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